建築家藤本壮介の展覧会の中に小さな図書室をつくらせていただきました。
本と椅子と空間と目の前に広がる都市が行き来するようなこの場では、ここでしかない読書体験の形が開かれています。

あわいの図書室 / Book Lounge of Awai (In-Between)

「あわい」とは、物と物、人と人、過去と未来、都市と自然など、異なって見えるものあいだにある、明確には定義できない、しかし確かに存在する"ゆらぎ"だと考えました。そして、重なり合い、にじみ合い、ときにすれ違う、その淡い関係性の中にこそ、新しい発見や創造が芽生えるのではないでしょうか? 藤本壮介の建築は、まさにそうした「あわい」に身を置き続けることで生まれてきた作品と言えるでしょう。

この「あわいの図書室」もまた、「読むこと」と、「読まないでいること」のあいだにある空間です。本を開くことも、椅子に座りただ眺めることも、手に取らずに通り過ぎることも、すべてが等しく意味を持つ。知識を吸収する場というよりは、思考や感覚がほどけ、漂いはじめる始発点としてのライブラリー。「読む」という行為の輪郭と時間を、もう一度ゆるやかにとらえ直すための空間です。

ここには、「森_自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」という5つのテーマのもとに、それぞれの本が、それぞれの椅子へと結びついています。それらの本は、建築を理解するための"正解"ではなく、むしろ読み手自身がそれぞれの想像力と出会うための"断片"です。

この図書室で本を開く人にも、ただ椅子に座り眺める人にも、それぞれの「あわい」がひらかれていくことを願っています。

藤本壮介の建築:原初・未来・森
The Architecture of Sou Fujimoto: Primordial Future Forest
2025.7.2 [Wed] - 11.9 [Sun]
10:00~22:00 Open every day
* 10:00-17:00 on Tuesdays
* Open until 22:00 on Tuesday, September 23, 2025.


セクション 3:あわいの図書室
展示風景:「藤本壮介の建築:原初・未来・森」森美術館(東京)2025 年
撮影:八代哲弥
画像提供:森美術館
Section 3: Book Lounge of
Awai (In-Between)
Installation view:
The Architecture of Sou Fujimoto: Primordial Future Forest, Mori Art
Museum, Tokyo, 2025
Photo: Yashiro Tetsuya
Photo courtesy: Mori Art Museum, Tokyo