丁寧に本を差し出す》

BACHは本にまつわるあらゆることを扱います。
本屋さんをつくったり、図書館をつくったり、
本自体を編集・制作するのが私たちの仕事です。
私たちは本というメディアの力を今でも信じています。
それは、小説でも写真集でもマンガでも図鑑でも雑誌でも同じことです。
印刷されたすべての言霊や感情を然る場所に届け、
あらゆる人たちにその面白さを伝えたい。
私たちの活動は、そんな気持ちに支えられています。

創業した2005年から、私たちは
「人が本屋に来ないのならば、人がいる場所へ本をもっていこう」と考えてきました。
そして、人と本が偶然出くわす「幸福な事故」を誘発させようとしてきました。
近年は本にまつわる素敵な場所も少しずつ増えてきましたが、
一方で読まれた本が誰かの日々に作用することは減っているとも思います。
時間の奪い合いが激しい現在は、
没入がたいへんな本と人の距離はひらいてゆく一方なのです。

けれど、そんな時代に私たちがやりたいことは、
1冊の本をなるだけ丁寧に伝え、それを読んでもらうという、
初期衝動とちっとも変わらないことです。
本は著者以外の誰かがひらき読んでこそ、はじめて本たり得ます。
そして、よく推敲された本のページを開き、その世界に身を委ねれば
ネット上に浮遊する情報のかけらとは違った感触や誰かの熱(奇妙な怨念ともいえます)を
きっと発見できるはずだと強く思っています。

本をよく知り、読み手の声に耳を傾け、丁寧に本を選ぶ。
世のアミューズメントが「共有」をベースに動くなか、
(読書中は)どうしても孤独にならざるを得ない本だからこそできるコミュニケーション、
そして、新しい「本の差し出し方」をこれからも考え続けたいと思っています。