安藤忠雄さんが寄付を集めてつくり、大阪市に寄贈したこども達のための図書文化施設のクリエイティブ・ディレクションを担当しました。選書・配架に加え、本を手に取りたくなる環境づくりやサイン計画、お土産開発などを様々なプロフェッショナルと協力しながら進めたプロジェクトです。
こども本の森は、こども達の素直な眼差しと感受性を大切にする物語の聖地となるように、との願いを込めてつくられた場所です。3フロア全ての壁が天井まで本に覆われており、まるで本に包まれているかのようなつくりになっています。分類・並べ方にも工夫を凝らしました。図書館の分類として一般的なNDC(Nippon Decimal Classification)をベースにしながら、こども達が興味を持てるよう再編集し、「自然とあそぼう」、「動物が好きな人へ」、「きれいなもの」など12のテーマに分類。手の届かない場所には表紙が見えるように陳列し、その棚の下には実際に手に取ってもらえるよう、同じ本を配架しています。本の中から印象的な言葉を抜き、スタイロフォームで文字を大きく掲示するなど、視覚に訴える差し出し方もしています。
コンクリート壁に取り囲まれた天高12メートルある円筒形の空間では、BACH企画、ライゾマティクス制作による映像作品「本のかけら」をお楽しみいただけます。『とりがいるよ』『魔女の宅急便』『星の王子さま』『よあけ』4つの物語の断片が本の中から飛び出し、本を開けば無限の世界が広がっているというメッセージを媒介し、本を手に取るきっかけをつくるとともに、こども達を本の世界へ誘います。
本の場所はつくったあとの方が重要です。館のクリエイティブ・ディレクターとして、こども達に好きだと言ってもらえる場所にするため、時代に合わせた努力を重ねていきたいと思います。

クリエイティブ・ディレクター:幅允孝(BACH)
アート・ディレクター:尾原史和(BOOTLEG)
マーチャンダイザー:山田遊(method)
映像制作:Rhizomatiks Design

写真:伊東俊介

〒530-0005
大阪府大阪市北区中之島1-1-28

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